STEP2_ep1 結婚→出産

ごきげんよう。 いとう るか です。
『まいっか☆いとうるか』
22回目の投稿となりました。
前回は なかちゃんの成長記録
「まいっか!」までの5ステップ
STEP1の最終段階、社会人になってから
結婚するまでのエピソードでした。
前回の投稿はこちら ⇓

ようやく独り立ち?

今回は、なーさんと結婚してから
ししょー誕生までのエピソードです。

結婚式と新婚旅行

結婚式は、遠方から親戚友人を招いて盛大に執り行いました。まだバブル崩壊直後ということもあり、ハデ婚最後の時代だったのかもしれません。どうしても綿帽子を被りたかったなかちゃんは、神前式を選びました。
式の直前、式場の案内の方から衝撃のひと言。「ご主人様、お渡ししていた誓詞(せいし)は一度お読みになりましたか?」なーさんはキョトン、なかちゃんはチーン。
そうです、神前式では夫となるなーさんが、宣言文を読むことになっていたのです。誓詞奉読(せいしほうどく)いわゆる「相和し、相敬し…」と神様に誓うあの言葉です。
結婚式の準備や式場との打ち合わせは、ほとんどなかちゃんがしていました。打ち合わせの資料の中に、その誓詞のコピーをもらっていたことに気付いたのはずっとあとのことです。とにかくもう間に合いません。なーさんは、ぶっつけ本番で誓詞を読むことになったのです。
式は滞りなく進み、いよいよ誓詞奉読です。初見のそれを、なーさんは緊張の中読み始めました。見慣れない日本語を何度もつっかえながら、何とか無事読み終えたなーさん。妻であるなかちゃんは最後に自分の名前を言うだけです。なかちゃんは申し訳なさと安堵で、なーさんは緊張でぐったりの神前式となりました。
披露宴と二次会も無事に終了。翌日からは新婚旅行へ。海外に全く興味のなかったなかちゃんは、なーさんと相談して会社の保養所巡りをする旅をすることにしました。それも九州。会社の同期や元上司など、現地を案内してくれそうな人脈と会社の口利きをフル活用しお得に旅をするという、新婚旅行っぽくないものでした。
福岡の中洲商店街で人生初めてのパチンコをしてみたり、屋台でワイワイ騒いだり、車であちこち案内してもらいながら観光地を巡ったりと、九州旅行は快適で刺激的な思い出となってなかちゃんの中に残りました。
いずれこの九州とのご縁が、なかちゃんに大きな影響を与えることになったのですが、それはまだずっと先のことです。

新婚生活と人間関係

結婚後なかちゃんとなーさんは、会社の社宅住まいとなりました。家賃は安いのですが何しろ古い。築30年以上は経とうかという昔ながらの建物で昭和そのものです。
浴室内には小さな洗面台、湯船の横にアナログな湯沸かし器、シャワーもありません。脱衣所もなく、玄関を開けたら風呂上りには丸見えという信じられない状況でした。食卓の真横にトイレのドアがあるという、何とも落ち着かない構造でしたが、周りの人も同じ条件なので文句は言えません。それでも大好きななーさんとふたりで暮らす家はとても楽しく、様々な工夫をしながら、なかちゃんは憧れだった専業主婦の日々を満喫していました。
自由気ままななかちゃんにとって“社宅”という環境は、やや居心地の悪いものでした。何故か なーさん経由で、なかちゃんの日中の行動が本人の耳に入るということもありました。
ある時、外出が長引き夕方帰宅した時のことです。そのあとしばらくして、なーさんが会社の人から「洗濯物や布団を遅くまで出している」と言われたそうなのです。
なかちゃんは、腹立たしいような恥ずかしいような、そしてなーさんに申し訳ない気持ちになりました。そして、人から監視されているような居心地の悪さを感じ始めていました。

アルバイトと妊娠

なかちゃんは、ウツツママから言われた「結婚すれば子供なんてすぐできるわよ」という言葉を信じていました。でも次第に「そうとも限らないのでは?」と、疑うようになっていきました。親の言うことを鵜呑みにする自分の癖に、この頃から徐々に気付き始めていたのです。
待っていてもすぐに子供は来ないんだと悟ったなかちゃんは、社宅の居心地の悪さも手伝い、アルバイトを始めることにしました。浅草の老舗のお蕎麦屋さんは、お昼時はとても忙しく、それまで何度か飲食店でのアルバイト経験があったなかちゃんでも目が回るほどでした。
そんな中での唯一の楽しみは、賄いで出してくれる『冷やしたぬき蕎麦』。それまでお蕎麦にあまり興味のなかったなかちゃんにとって、その美味しさと魅力を知るきっかけになったのが、賄いのお蕎麦でした。
ようやく仕事にも慣れた頃、妊娠が分かりました。待っている時は訪れず、忘れた頃に現れるものなのかもしれません。
たった3ヶ月ほどのアルバイトでしたが、なかちゃんは忙しさと自由、そして美味しいものとの出会いなど、多くのことを学ぶことができた貴重な時間を過ごしました。そして今も、蕎麦は冷やしで、最後には必ず蕎麦湯を頂くなかちゃんなのでした。

体調不良と入院

「なんか調子悪いな…」なかちゃんは妊娠が分かってから、そんな毎日を過ごしていました。「つわりは一時的なものだから、すぐ良くなるわよ」そんなウツツママの言葉も、今回ばかりは始めから信じることができないほど、具合の悪い日が続きました。仕事を辞めまた専業主婦になったこともあり、何とか家事だけでもちゃんとやろうと思いながらも、動くことができません。買い物に行っても、特にスーパーのお肉売り場は呼吸を止めなければならず、なーさんのためにご飯を作るのもやっとでした。どんどん体重は落ち、みるみるうちに顔がこけ始めました。
ある日の妊婦健診で子宮内の出血が見つかり、切迫流産との診断を受けました。すぐに入院、病院のベッドで安静にする日々が続きました。症状が落ち着いたところで退院。その後も自宅で安静にする毎日です。その頃には少しお腹も張り出してきていましたが、何しろなかちゃんはガリ痩せしているので、本来の妊婦さんのような福々しさはありません。少し動くとお腹が張り、座り込む毎日に「なかちゃんだけなんでこんな状態なんだろう…」と嘆いていました。
その後も、切迫早産の危機を何とか薬で食い止め、だましだましお腹の子を生かしながら8か月目に入りました。

出産と救急搬送

妊娠中に通っていた近くの総合病院には、産科がありませんでした。出産が近くなった段階で転院することにしていたので、明日紹介状をもってその産婦人科医院に行こうとしていた矢先のことです。
朝方、なかちゃんは布団が濡れていることに気付き目が覚めました。なーさんを起こし、これは破水か?尿漏れか?という確認を二人でしましたが判断が付きません。とにかく病院に行こうとなりましたが、当時はマイカーがありません。社宅で仲良くしてくれていた家族に連絡をしたところ、病院まで車で送ってくれることになりました。
「今日からお世話になる予定だった者です…」そんな挨拶で院長先生と初対面です。診察の結果、少し破水しているとのことでそのままなかちゃんは入院。急きょ出産が目の前の現実となりましたが、何の虫の知らせか、一週間前に入院と出産の準備を済ませていたことがここに繋がり「そゆことね…」と、なかちゃんはちょっと納得していました。
平日だったこともあり、なーさんはそのまま仕事に行きました。なかちゃんはひとり、病院のベッドの上で天井を見上げていました。結婚も妊娠も早かったなかちゃんは、同級生に出産を経験した友達もおらず、インターネットもない時代です。情報源はよくわからない育児本と、昔の経験者ウツツママくらいでした。知り合いもほぼいない、ましてや今日初めて来た病院での出産は、もうお手上げ状態でぼんやりしていました。
なかなか陣痛が進まないガリ瘦せのなかちゃんは、陣痛促進剤で出産を促すことになりました。仕事を早々に切り上げて夕方駆けつけてくれたなーさんが来た時には、なかちゃんは「遅いよ!!」と怒鳴り散らす状態になっていました。
体力の限界だったなかちゃんの状態から、鉗子を使って子どもを引っ張り出すことになりました。産まれたはずなのにすぐに泣かない赤ん坊に「何で泣かないの?何で泣かないの?」とオロオロ。処置を済ませ、小さな声で「ふえ~…」と声が聞こえた時、なかちゃんは「すぐに声が出ないのには色々な理由があるんだ」ということを知り、安堵したのです。これが、いずれなかちゃんを支えることになる『ししょー』の誕生です。
喜びも束の間、手のひらにわずかに乗る小さな頭は縦に延び、子猿のようなやせ細った赤ん坊はすぐに救急搬送され、なーさんと共にいなくなってしまいました。そしてまた、なかちゃんは病院のベッドでひとり、天井を見つめていました。
なかちゃんは、自分が出産というものに向かない体質なんだということを、妊娠していた8か月の間に痛感しました。原因は分かりません。持って生まれたものなのか、自分の行動が悪かったのか、そして次は平気なのか…自分を責めたところで仕方ないけれど、小さく生まれた子供への申し訳なさは、その後大きく成長するまでしばらく続くのでした。

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まとめと次回

今回は、なかちゃんの成長記録「まいっか!」までの5ステップ STEP2の最初のエピソードとして、結婚してから出産するまでのエピソードでした。
結婚して自由になった気でいたなかちゃんですが、社会で生きていくということは、不自由なことも思い通りにならないこともあります。人との関りの中で窮屈なこともあれば、助けてもらえることもあるように、物事には両面があるのです。
一人の人間をこの世に生み落とし、育てていく責任を背負ったなかちゃんですが、本当の意味で成長するのはこれからです。この先待ち受けている試練によってどんな風に成長していくのでしょうか。

さて次回は、子育てをしていく中で改めて社会との繋がりを意識し、パートタイム労働者として社会復帰するまでのエピソードを書いてみたいと思います。

なかちゃん
なかちゃん

最後だけ登場~
まったね~!まったきってね~!