STEP1_ep5 16歳→20歳

ごきげんよう。 いとう るか です。
『まいっか☆いとうるか』
19回目の投稿となりました。
前回は なかちゃんの成長記録
「まいっか!」までの5ステップ
10歳から15歳までのエピソードでした。
前回の投稿はこちら ⇓

新たな経験は刺激がいっぱい

今回は、高校生から短大生までの
社会人になるまでのエピソードです。

高校

勉強

小指一本で何とか合格したということは、高校に入ってからどういうことになるのか…お気楽思考のなかちゃんは、試練が待っているなどとは夢にも思っていませんでした。
その試練はすぐに訪れます。1年生の1学期、数学の期末テストで なんと0点を取ってしまったのです。さすがのなかちゃんも初めての経験です。「えらいことになった…」と本気で焦りました。追試で合格点を取らなければ一体どうなるのか…そんなことを考える余裕もありません。とにかく必死で勉強しました。
そして追試を受けた結果…驚くことに100点を取ってしまったのです。これがいけなかった。
地獄から一転、短期間で一気に天国へ。結果的に「なぁんだ、なかちゃんってやればできるんじゃね?」という、お調子者のお気楽思考に拍車をかけるきっかけとなってしまいました。
その後も、なかなか勉強に身が入らなくなってしまったのは、この「やればできるんじゃね?」の楽観視を自分で植え付けたことが原因です。試験前に一気に勉強をするクセは抜けず、他の教科はまだしも苦手の数学はいつも赤点ギリギリ。それでも、過去の“何とかなってしまった経験”で、なかちゃんは危機感を抱かないまま3年生まで低空飛行を続けたのでした。

部活

1年生の時は、マネージャーとして女子バレーボール部に入部しました。何故やったこともないバレー部に入ったのか、なかちゃん本人も未だ動機が不明のようです。ルールも曖昧、スコアブックも書けない。結局1年で退部してしまいました。
2年生になり、同じように1年で他の部活を辞めた友達数名と、今度は無線部に入りました。他の友達の動機は分かりませんが、なかちゃんは「学校で一番高い場所に行ける!」という安易なワクワク感がその理由でした。そうなんです。無線部は、最上階の更に上の、屋根裏のようなところが部室だったのです。幼いころから高い所や狭い所、基地のような場所が大好きだったなかちゃんは『空間』で決めてしまいました。とは言え部活ですから、無線(HAM)を使えるようにならないといけません。なかちゃんは、好きも嫌いもなく全く無知のところから、無線従事者免許の試験を受けることになりました。
試験勉強を始めてすぐ「これは理系の内容だ!」ということに気付きました。苦手な部類の勉強を、学校の勉強に加えてやることになり「あちゃ~」と思いながらも、自分で決めたことなので逃げられません。二度の受験で何とか免許を取りました。これもまた「やればできるんじゃね?」と半端な自信を付ける要因になってしまったのですが…
無線部には卒業まで在籍しましたが、結局肝心の無線機に触ったのは数えるほど。ほぼ男子部員しか活動していませんでした。唯一部活動らしいことをしたのは3年生の文化祭。校内放送のラジオDJをしたことです。学校で人気のミスとミスターにインタビューをしたり、音楽を流したり、全く無線とは関係のない部活動が一番の思い出となっています。
もちろん今も無線を使うことはありませんが、話のネタとして活用しています。そして頑張って取得した免許証は、努力の結晶として今も大切に保管しているのでした。

恋の始まり

それは突然のことでした。1年生の体育祭、女子バレーボール部は、ゴールした人を着順に座るよう案内する係をしていました。なかちゃんが、2着で走り込んできた3年生の先輩を捕まえた時でした。一瞬で心惹かれたのです。何がということではなく、不意に落ちたということでしょう。それから何年もの間その人一筋に思いを寄せるほど、なかちゃんの青春でした。
先輩には彼女もいました。先に卒業もしてしまいました。でもそんなことはなかちゃんにとって大したことではなかったのです。ただその人に出会えたことが幸せでした。無理を言ってお茶に誘ったり、遠くまで会いに行ったりもしましたが、先輩はいつも大人の対応をしてくれました。誰も傷付かないように、優しく適切な距離で接してくれたのです。
やったこともないバレーボール部に入ったのは、この人に出会うためだったのかもしれません。

幻のダンス部

30年以上も前の話です。なかちゃんと数名の友達で「ジャズダンス部を発足させよう!」としたことがありました。
きっかけは、女子バスケットボール部が練習前のウォーミングアップとして取り入れていたダンスでした。音楽が聞こえてくると、体育館内の部活はもちろん外で部活をしていた人たちも、一緒になって真似をしていました。みんなで身体を動かす楽しさというものを、その時なかちゃんは初めて知ったのです。
今でこそ学校の授業でも取り入れられているダンスですが、当時の田舎は情報もなく、指導者もいません。先生に掛け合ってみたものの、部員数や活動内容など色々な条件を出され、断念せざるを得なくなってしまいました。
でもなかちゃんは信じていました。「みんなで踊るダンスはこんなに楽しいんだから、必ず日の目を見る日は来る!」と。
数十年後、Choo Choo TRAINでダンスブームを作ったのが同世代のHIROさんだと知った時、なかちゃんはあの頃のことを思い出し、胸が熱くなるのを感じました。そしてみんなで踊る楽しさを広め、新しい時代を作ってくれたHIROさんに、今も勝手に感謝しているなかちゃんなのでした。

トラウマ

ある時 なかちゃんはウツツママと一緒に、電車に乗って買い物に出かけました。田舎の沿線とはいえ週末ということもあり車内はかなり込んでいました。座る席もないので、ふたりでドア付近に立っていました。
ドアにもたれかかるようにひとりの女性が立っていました。何となしになかちゃんの視界に入っていて(妊婦さんかな?)とも思っていました。そう思った次の瞬間、その女性がふらつき座り込みそうになったのです。(あ!)と思ったなかちゃんが、手を差し伸べようとした時です。「ダメ!」と、ウツツママに制止されたのです。そして小声で「どんな人かわからないから!」となかちゃんの手を引きました。そして、見てはいけないとでも示すように目を逸らしたのでした。
なかちゃんは考えていました。いったい何がダメだったんだろう、手を差し伸べたことがいけなかったのか、そうしようとした自分の判断が間違っていたのか…考えても考えても、何も分かりませんでした。ウツツママに倣って目を逸らし、窓の外を見つめ続けました。もうその女性を見ることはできません。だからそのあと、その女性がどうなったのかも分かりませんでした。
なかちゃんが助けようとしたのは、考える前の反射的な行動でした。その瞬時の判断に対する『自分への信頼』は、こんな些細な出来事をきっかけに崩れることとなったのです。なかちゃんは、この時生まれた自信のなさを、お調子者のお気楽思考で覆い隠し、無意識下に押し込め、フタをしてしまいました。

大学受験

3年生のクラス編成は、進路により文系と理系ではっきり分かれました。数学が鬼門のなかちゃんはもちろん文系でしたが、じゃあ将来何がやりたいのか?と聞かれても、何もない状態でした。英語、文学、法律、経済、経営…どれもなかちゃんにとってはピンとくるものではなく、方向性を決めかねていました。
唯一興味のあったことはお菓子作り。小さい時から暇さえあれば何か作っていました。これは専業主婦のウツツママが、家計のやりくりのためなるべく手作りしていた影響でしょう。誕生日ケーキやおせちなど買ったのを見たことがなかったため、なかちゃんにとって家庭で作ることは日常でした。
ウツツパパとウツツママは、あにうえに対する期待とは違い、なかちゃんに対しては大学に行くことを強く勧めることもなかったことから、とりあえず興味のある食べ物に関する学科のある短期大学に進むことにしました。
とは言えこれまでお気楽思考でやってきたなかちゃんです。案の定成績は芳しくありません。高校受験同様、ギリギリになって焦ったのは言うまでもありません。推薦入試もことごとく落ち、一般受験で何とか合格できたのでした。

短大

お育ちの違い

なかちゃんは高校卒業のタイミングで、先に転勤が決まり関東に引っ越していたウツツパパとあにうえに合流し、再び家族4人で暮らすことになりました。そして、自宅から2時間かけて短大に通うことになったのです。
入学した大学とその短期大学部は、系列の中学・高校からエスカレーター式に進学してきたお嬢様がたくさんいるところでした。ブランド品を身にまとい、バブル期ならではの化粧を施した女子大生が、意気揚々とキャンパスを闊歩していました。
類は友を呼ぶと言いますが、なかちゃんの周りは一般受験で入学してきた友達ばかり。それなりの身なりとそれなりの生活習慣。ごく普通の学生でした。育った環境でこんなにも金銭感覚が違うものかと、社会の縮図を見た気がしたのでした。
学校の勉強は相変わらずやっつけ癖が抜けず、試験前にドカッとやり、何とかくぐり抜けるというパターンは変わりません。実験や実習は興味深かったものの、やればやるほど「これをやりたいんじゃないなぁ…」と、意欲を失っていく自分にも気が付き始めていました。

恋の終わり

運命のいたずらでしょうか。偶然にも、長年思いを寄せていた先輩の大学は目と鼻の先でした。せっかく近くにいるのだからと、何度か手紙を書きました。でもどんなに調整してもタイミングが合わず、不思議と会えなかったのです。
携帯電話のない時代、自宅に電話をもらうのは勇気がいりました。でもどうしても会いたかったなかちゃんは、手紙という手段を諦め、日にちと時間を指定して先輩から自宅に電話をもらうことにしました。
そしてその当日。なかちゃんはアルバイトから帰ってきたあと、異様な睡魔に襲われました。このあと先輩から電話がくる予定です。何とかその時間までと思いましたが敵わず、ウツツママに「電話がくるからもし寝ていたら起こしてね」と頼み、少しだけ眠ることにしたのです。
目を覚ましたのは翌朝でした。跳び起きたなかちゃんは「何で起こしてくれなかったの!」と言いましたが「起こしたけど起きなかったから」というウツツママの言葉。もう何も返す言葉もなく、茫然とするばかりでした。
なぜ、あのような睡魔に襲われたのかはわかりません。どんなに会いたいと思っても、会えない人には会えないんだということを痛いほど知ることになりました。そして『無理矢理手繰り寄せる糸は切れる』ということを学び、なかちゃんの一途な恋も終わりを迎えました。

サークル活動

バブル全盛期のサークル活動は、とても華やかなものでした。なかちゃんは流されるまま他大学のサークルに入り、テニス合宿やスキー合宿、ダンスパーティーにも参加しました。そのためにアルバイトでお金を稼いでいたようなものです。お金が入っても出ていくだけの循環にただただ流され、表面上は楽しかったものの、虚無感に襲われることもしばしばありました。
以前の投稿にも書きましたが、なかちゃんのおうちは門限が夜11時です。東京都心の繁華街でパーティーがあると、9時半には店を出なければなりません。サークルの男子からは「付き合いわりいな」と言われましたが、ウツツパパに話せば「そんな奴ら相手にする必要はない!」と一蹴です。確かにそうだと思いつつ、とは言えもう少しみんなといたかったという思いでモヤモヤしたまま、家のルールに従うしかありませんでした。
ウツツパパの心配する理由も頭では理解していました。でもまだ若かったなかちゃんは、家のルールを窮屈に感じ始めていました。そして少しずつ「このまま親に従って生きていっていいのかな」と思うようになっていきました。

就職活動

バブル景気真っ只中の就職活動は、まさに売り手市場で求人は山のようにありました。ほどほどの成績のなかちゃんでも、選ばなければ何となく就職できそうな状況でした。特にやりたいこともみつからないまま卒業を控え、大学に貼られていた求人票をぼんやり眺めていました。
そしてふと、目に留まった会社がありました。会社概要や業務内容を見て、よくわからないけど受けてみようかなと思ったのです。自宅に帰り、求人票をウツツパパに見せたところ系列会社であることが分かりました。
特段就職活動もせずに、その会社から内定通知が届きました。今思えば『縁故』採用だったのかもしれませんが、なかちゃんの意識の中では「見つけた」という感覚でした。
何となく「そうだ、内定のお礼を言わなきゃ」と、人事担当の方に手紙を書きました。すると後日、ウツツパパが「人事宛てに手紙を書いたのか?」と言ってきたのです。そうだと答えたなかちゃんに「そんな人初めてだと痛く感動していたぞ!」と言われたのです。今では就職活動の流れで当たり前になっている内定のお礼メールですが、当時としては珍しかったのかもしれません。
いずれにしても、この会社に就職が決まったことで、のちの伴侶となる なーさん と出会うことになりました。

ひとりぼっちの成人式

成人式の招待状は、住民票のある自治体から届きます。なかちゃんは高校卒業と同時に引っ越してしまったので、青春時代を過ごした場所での成人式には出席できませんでした。(今は希望する自治体で出席できるようです)住んでいる場所には同級生もいなければ知り合いもいません。出席したところで、知っている人は誰もいないのです。でも、ウツツパパとウツツママからは「一生に一度なんだから出席しなさい」と言われ、しぶしぶ出席することにしました。
成人式当日、振袖を着せてもらいました。着飾って嬉しかったのも束の間、「もう成人なんだからひとりで行きなさい」と言われたのです。つまり、会場までもひとり、会場でもひとりです。頭をガンと殴られたようなショックを受けました。
会場までの長い道のりを、なかちゃんはひとりでとぼとぼ歩きました。会場に着くと、同級生の仲間が集まって久しぶりの再会に沸き上がっています。お互いに写真を撮りあったり笑い合ったりしています。ご両親が娘の晴れ姿を写真に収めているのも目に入りました。綺麗な着物を着たなかちゃんは、独り、会場の席に座りました。
帰り道、同じ道をひとりで歩きながら涙が溢れました。出席したことさえも後悔していました。自宅に帰ると、ウツツパパとウツツママはいつも通り生活していました。もう涙は出ません。
この時なかちゃんの中で何かが壊れてしまいました。

まとめと次回


今回は、高校生から社会人になるまでのエピソードでした。大人と子供の狭間で揺れ動く年頃です。
恋に恋して、そして失って、少しずつ色々な事を学んでいきますが、大人になったのに大人になれないなかちゃんは、アイデンティティの拡散に気付かないまま、このあと社会にでることになります。
次回は、STEP1の最終段階。
社会人になって結婚するまでです。

なかちゃん
なかちゃん

最後だけ登場~
まったね~!まったきってね~!