STEP1_ep4 10歳→15歳

ごきげんよう。 いとう るか です。
『まいっか☆いとうるか』
18回目の投稿となりました。
前回は なかちゃんの成長記録
「まいっか!」までの5ステップ
6歳から10歳までのエピソードでした。
前回の投稿はこちら ⇓

気づきと学びと切なさと

今回は、転校した10歳から
中学校卒業までのエピソードです。

新しい環境

なかちゃん家族が引っ越した先はとても温暖な気候で、お茶やみかんの生産が有名なところでした。実は引っ越す前に一度、家族で新しい家を下見に行ったことがあるのですが、なかちゃんは自宅に戻った直後40℃の高熱を出してしまいました。寒暖差も含め、生まれて初めて経験する大きな環境の変化に、身体がビックリしたのかもしれませんね。
引っ越し早々、なかちゃんは あにうえと一緒に家の周りを探検しました。そこには初めて見るものばかり。一面に広がる田んぼや用水路などは見たことがありません。道路はこれまで見てきたものよりもかなり狭く、車に轢かれてぺしゃんこになったヘビやカエルの死骸がいくつもありました。家の屋根は瓦でできていて、隣の家との間隔も狭く少し窮屈な印象でした。ワクワクする景色も、ちょっとビックリした光景も、どれも新鮮な驚きがありました。
探検していると、田んぼ脇で大きなウシガエルを見つけました。なかちゃんは元々カエルが大好きで、オタマジャクシも卵から孵して飼っていたこともあります。嬉しくなって捕まえて、家に持ち帰りました。
「ねぇ見て!すごい大きいカエルを見つけたよ!」と、両手いっぱいの大きなカエルを掴んで、ウツツママに見せたからさあ大変です。なかちゃんがこれまで聞いたこともないような叫び声とともに「早く捨ててきなさい!」と怒鳴られてしまったのです。なかちゃんはてっきり「すごいね!」と言ってもらえると思ったのですが、怖がらせてしまったうえに怒鳴られてしまったのです。しぶしぶ田んぼに戻り、元いた場所にウシガエルを返してきました。
この時なかちゃんは、自分が楽しいと思うことが、他の人も楽しいと感じるとは限らないんだということを知りました。

新しい学校

古い木造校舎は、なかちゃんにとってはむしろ新鮮でした。長年たくさんの人に触れられてきた階段の手すりは、つるつるして触り心地が良く、ピカピカと光って見えました。
なかちゃんとあにうえには『転校生』という期間限定の名札が付いていました。人の噂も七十五日と言いますから、いつの間にかそれも外されたのでしょう。それでもしばらくは、遠い北国から来た謎の生物を一目見ようと、多くの関心を集め、常に誰かに見られているという学校生活が続きました。
なかちゃんは、前の学校でも転校生は何人か見ていたけれど、自分がその立場になって初めて、とても不安で居心地の悪いものなんだということを知ったのです。
学校生活では、次々と試練が訪れました。その学校には、学校指定の制服がありました。その他にも体操着、学年帽、給食着、上履き、絵具や裁縫セット・書道セットまで全て、入学時点でみんな同じものを揃えて買っていたのです。
これまで自由な校風の中で育ったなかちゃんとあにうえには、みんな同じものを持つという感覚がありませんでした。転入してしばらくは制服がなく、私服で学校に通わなければならなかったことも、注目を集める要因となってしまい、そしてそれは『自分はよそ者なんだ』という意識を更に強く植え付けるものとなりました。
中でも水着は最たるものでした。何しろなかちゃんの水着は『水遊び』仕様です。フリルの付いた真っ赤な水着は、紺色のスクール水着の中で否応なしに目立つものとなり、笑われたり指を指されたりと更に居心地の悪さを増しました。
そして勉強。これまでほとんどせずにぼ~っと生きていたなかちゃんにとって、新しい学校での学習スタイルは大きなショックでした。宿題の多さはもちろん、塾に通っている子もいました。当然追い付いていませんからやることが山のように出てきたのです。この頃のことをなかちゃんは「人生で一番集中して勉強した」と言っています。
大きなショックは続きます。春に終わったはずの『運動会』。なんと新しい学校では『秋』に開催されるのです。まさか年に2回も運動会をすることになるとは夢にも思わず「わたしはもうやりました!だから出ません!」とも言えず、なかちゃんの落胆はいかばかりだったか…想像に難くありません。
何とか5年生をやり過ごし、ようやく環境にも慣れた頃6年生になりました。高学年の2年間は怒涛の勢いで通り過ぎていくのです。

新しい恋

なかちゃんには気になる男の子ができました。前の学校で好きだった子に似て、とても優秀で恥ずかしがり屋さんでした。
ある時、意を決して手紙を書き、その子の家のポストに投函しました。初めてのことで戸惑いながらも勇気を出してやってみたのです。
なかちゃんは、学校であったことや友達とのことを何でもウツツママに話していました。だから今回も、ちょっと恥ずかしかったけど、ワクワクドキドキ感を共有したくて話してみたのです。
その時ウツツママは、アイロンがけをしていました。その横顔に「あのね…」という切り出しで手紙を出したことを伝えた時、返ってきた言葉は「後悔するよ」という一言。その言葉は、ため息混じりで半ば呆れるような音色を含んでいました。そしてまたアイロンがけを続けるウツツママの横顔を見ながら、なかちゃんは恥ずかしさを誤魔化す言葉をいくつも並べました。でも、並べた言葉は全て突き放され、笑顔が返ってくることはありませんでした。
「後悔するよ」確かになかちゃんは後悔しました。手紙を出したことよりも『ウツツママに話したこと』を後悔しました。そしてこの受け止められない、突き放された感覚は、長くなかちゃんの自己否定の元凶となって残ることとなりました。

人を好きになること、そのような人に出会えたこと、それだけで「とても幸せなこと」だということは、今のなかちゃんにはわかります。そして否定的な言葉しか返さなかったウツツママにも、きっと思いがあってのことだということも…
未熟だったなかちゃんの新たな恋は、自分に対する無価値観が邪魔をし、これ以上踏み出すことはできずに、再びフェードアウトしてしまいました。

新しい仲間

小学校で転校生として過ごしたことをきっかけに、なかちゃんのぼんやり気質は一転しました。馴染むためのスキルとして、男女関係なく積極的に話しかけ、時には自分をネタに笑ってもらうこともできるようになっていました。
中学校に入ると、別の小学校から来た同級生が加わり、更に環境が大きく変わりました。先輩後輩という上下関係がはっきり線引きされ、あにうえに対しても先輩という意識が芽生えます。反抗期真っ盛りのあにうえとは家で会話することは多くありませんでしたが、学校でのあにうえはちょっとだけ頼もしく見えて、誇らしくもありました。
運動会は『体育祭』という名称になり、合唱コンクールも一気に大人びた行事に感じられました。特に3年生という煌きは、なかちゃんの目にとても眩しく映り、憧れの先輩もたくさんできました。「〇〇先輩が廊下を通った!」「〇〇先輩が校庭でサッカーしてる!」などなど、日々キャーキャーと青春を謳歌していました。こんな調子ですから、部活動もそれなり、勉強もそれなり。なかちゃんにはあまり危機感がなく、何かと理由を付けては現実逃避していました。

新しい試練

『受験』というパワーワードは、キリギリス状態で過ごしていたなかちゃんでさえも、意識せざるを得ない力を持っていました。そして、キャーキャー過ごしていたツケはしっかり回ってきたのです。
あにうえは、色々なプレッシャーを抱えながらも進学校と呼ばれる高校に入りました。でも、お調子者のなかちゃんは大した勉強もしておらず、案の定最終学年になって慌てる始末。とてもあにうえのようにはいきませんでした。
相変わらず苦手が克服できない算数改め数学も、やらないわけにはいきません。ぼんやりもしていられず受験勉強に取り掛かります。始めてみて「間に合わないんじゃないのこれ?」そう思ってもあとの祭りです。いつもテスト前に一気に勉強する癖は抜けず、受験もやはり直前になってから、得意の「おりゃ~!」でやることになってしまいました。
受験当日は学校の同級生と試験を受けに行きましたが、みんながライバルです。そんな感覚がとても嫌で「競い合うのってやっぱ嫌い」と内心感じていたなかちゃんは「受験なんてなければいいのに」と思いながら、ついでに「体育祭もなければいいのに」という虫のいいことまで考えていました。
合格発表は、高校に貼り出されました。イマドキのネットでログインなどがない時代です。自分の受験番号を目で追うリアルなドキドキ感は、合格した人にとってもそうでなかった人にとっても『体感』として想い出に残るのではないでしょうか。
お調子者のなかちゃん。運だけはいいと自負するように、何とか志望校合格です。
でも、日々誠実に努力している人には敵いません。「小指一本で何とかつかまった!」とふざけていたなかちゃんは、やはりここでもそのツケが、あとから回ってくるのでした。

まとめと次回

今回は、転校してから中学校卒業までのエピソードをお伝えしました。
ぼんやりからお調子者へと変身したなかちゃんですが、このお調子者も、のちのち自分を苦しめることになってしまいます。でもそれも進化の過程。環境の影響、考え方や気持ちの変化で『本当の自分』を模索しながら成長していくのでしょう。
次回は高校から社会人になるまでです。

なかちゃん
なかちゃん

最後だけ登場~
まったね~!まったきってね~!